Linda Ronstadt

Hand Sown...Home Grown

3人組バンド、ストーン・ポニーズで3枚アルバムを出した後に解散して、ソロデビュー。

田舎出身の素朴な若いお嬢さんが頑張って歌っていますという感じが初々しいです。

カントリー風のアレンジの曲が多く気楽に聴けます。心にずんずんと染みていく感じの曲はまだなし。

Silk Purse

カントリーミュージックの本場、ナッシュビルにあるスタジオでレコーディングしたことで、カントリー色が高まっています。時おり入る軽快なフィドルの音色が心地よし。

素朴でほっこりとした気持ちになりたい時にはいい感じ。

アルバム発売後のツアーのバンドメンバーとして、ドン・ヘンリー、グレン・フライ、バーニー・レドン、ランディー・マイズナーを起用。

Linda Ronstadt

しっとりとしたテンポの曲が続き、元気いっぱいの勢いがあった前作と異なり、落ち着いた印象があります。アレンジはカントリー風。

同じような雰囲気の曲ばかりで面白みに欠けます。

前述のツアーメンバーがレコーディングに参加。終了後、彼らはイーグルスを結成してデビューしました。

Don't Cry Now

のちに西海岸サウンドを牽引するJ.D.サウザーが提供&プロデュースした曲に加え、彼女の黄金時代を築いていくピーター・アッシャーがプロデュースした曲、前作のプロデューサーが担当した曲も収録。曲に多彩さが出ています。

脱カントリー風の都会的なアレンジのしっとり目の曲が多いなか、たまにはいるアップテンポ曲がいいアクセントになっています。

同年にリリースされたイーグルスのDesperadoをピアノをバックにじっくりと歌っています。


(SACD)

Heart Like A Wheel

ピーターの全面プロデュース作品。

前半はしっとりとした落ち着きのある、心に染みる系の曲が続き、ゆったりとした気持ちになれます。後半は一転してアップテンポ曲でシャキッと覚めて、陽気さを感じる明るめの曲が連発されます。ラストは静かに余韻たっぷりに終了。

Prisoner In Disguise

バンジョーとフィドルが鳴るカントリー調の曲でスタートし、前作からの変化を感じます。

その後はしばらくおとなしめの曲が続き、中盤の鮮やかなギターソロがテンションアップさせるノリノリ曲を入れてアクセントをつけています。その後はコーラスワークが冴える曲の連発。特にThe Sweetest Giftではエミルー・ハリスとのハモリが見事です。

Hasten Down The Wind

カーラ・ボノフ作曲のLose Againで幕開け。高らかに歌う姿はボーカリストとしての成長を感じます。泣きのギターが入るドラマチックな曲に仕上がっていて新境地への到達を感じます。カーラが書いた他の2曲も素晴らしく、これをきっかけにカーラが歌手としてデビューします。

リンダ、リンダ父らが書いたLo Siento Mi Vidaはスペイン語の歌詞になっていて、のちに彼女がスペイン語アルバムを作ることへのつながりを感じます。

LPでいうB面は男性ボーカルを起用した短いアカペラ曲でスタートし、カリブ海的な軽快曲に入るところは爽快です。

全体的に音数が多くてコーラスも多用し、抑揚のあるドラマチックになっています。ラストのカーラ作品Someone to Lay Down Beside Meは絶品。

Simple Dreams

気合が入ったパワフルなボーカルが聴ける曲でオープニング。前作の大ヒットで得たみなぎる自信を感じます。続くリラックスしたシンプルなアレンジの曲とのコントラストが絶妙。

中盤のI Never Will Marryではドリー・パートンとのハモリが心地よいです。ドン・ヘンリーとハモった曲では南国風のアレンジにゆったりとした気持ちになります。

ラストはローリングストーンズ曲でハードに盛り上がった後、カントリー風のゆったり曲でほんわりと終了。

Living In The U.S.A.

チャック・ベリー作のシンプルなロックンロールで幕開け。これまでにないドライ&爽快さにビックリします。曲の勢いにあった歌い方になっていてロックシンガーとしての覚醒を感じます。

続く曲ではシンプルなピアノの調べをバックにじっくりと高らかに歌い上げます。ミュージカル曲の雰囲気があり、のちのミュージカル挑戦の布石になっている気がします。

その後もパワフルなボーカルが聴ける曲やソフトにしんみりと歌う曲が収録され、アルバム全体にバリエーションがあります。

ラストは、アコギ弾き語りでエルビス・プレスリーのLove Me Tenderをしんみりと歌います。男性ボーカルとのハモリが美しいです。

Mad Love

当時隆盛していたポストパンク、ニューウェーブを取り込んだロック・アルバム。飾りを捨てたシンプルなロックサウンドになっていて、サウンドの変化が強烈で「ええとこのお嬢さんがグレて不良になってしまった」という感じ。

リンダはこれまでになかった力強い声で歌っていて、新境地にかける意気込みを感じます。

ガンガンなストレートなロックに気分が高揚し、時おり入るバラードが心に染みます。

Live in Hollywood

1980年4月24日のハリウッド公演を収録。

「激愛」の収録曲を主体にしてロックシンガーとしてのリンダを強調する曲が選ばれています。声のパワフルさに圧倒されます。

ガンガン行くときは攻め、バラードで落ち着かせるところはじっくりと聴かせるというメリハリが効いていて聴きやすいです。

終盤は、How Do I Make YouとBack in USAで突っ走った後、Desperadoでクールダウンして閉めるという流れがナイス。

Get Closer

1980年の夏からブロードウェイでのミュージカル出演話を進め、1981年1月からコミックオペラ「ペンザンスの海賊」に出演。それに感化されてスタンダード曲を収録したアルバムを作るものの出来に満足いかず封印し、結局、従来路線を踏襲して作った本作をリリースしました。

オープニング曲のソウルフルな気合が入った歌い方に圧倒されます。続くバラード曲は、雰囲気はミス・アメリカ以前のものですが、歌い方にさらに抑揚がついて、ボーカリストとして完成の域に達したと感じます。

リンダのパワフルな声に引っ張られて、多彩な音色を入れたバッキングが映えています。

後半はロック曲連発で爽快感を味わった後に、J.D.サウザーとのハモリバラードが来て、ラストはドリー・パートンとエミルー・ハリスとの3声コーラス曲で終了。


(DVD)


(Blu-ray)

The Pirates of Penzance

リンダが出演したコミックオペラ「ペンザンスの海賊」を映画化したもの。


(SACD)

What's New

「やはりスタンダード曲のアルバムを作りたい」という気持ちが募り、ネルソン・リドルをアレンジャーと指揮者に迎えてレコーディング。

オーケストラをバックにして高らかに歌い上げていて、彼女の歌唱力が際立っています。ポップさやロックさを期待すると「あれっ? 違う」と思いますが、過去の彼女とは全く違う新たな魅力があります。

Lush Life

ネルソンと組んだスタンダード曲集の第2弾。

ゆったりとした気持ちでネルソンが指揮するバンド演奏とリンダの澄んだ声が織り成す世界を味わえます。

For Sentimental Reasons

ネルソンと組んだスタンダード曲集の第3弾。

雰囲気は過去2作と同様。ネルソンが指揮するゆったりとした華麗な演奏とリンダの歌声にじわっと浸れます。

レコーディング途中でネルソンが死去。

Trio

長年共作を模索していたリンダ、ドリー、エミルーが満を持して発表したアルバム。

爽快でなつかしさあふれるカントリー・ソングが、3人の声のからみで披露されています。

カントリー・ソングが好きな方はどうぞ。

Canciones De Mi Padre

父から学んだメキシコのトラディショナル・ソングをマリアッチ楽団をバックにスペイン語で歌ったアルバム(彼女のおばあちゃんがメキシコ人)。

とにかく陽気で、リンダが心の底から楽しんでいるのがよくわかります。しかし、本来の彼女のスタイルではないので、まずは他のアルバムを聴いて彼女のファンになってから聴きましょう。

Cry Like A Rainstorm, Howl Like The Wind

数々の新世界への挑戦を経て、普通のポップサウンドに戻ってきました。

オーケストラやゴスペル隊を入れて華麗さとゴージャスさがアップした演奏をバックに、抑揚がついた圧巻のボーカルを聴かせてくれます。

4曲でR&Bシンガーのアーロン・ネヴィルとデュエットを披露しています。彼の独特な甘い声とリンダの声のからみが絶品です。

Mas Canciones

英語で歌う新作を作っていたものの気に入らずにボツにして、再びメキシカンなアルバムを作ったもの。

リンダの弟、ピートとマイクが参加して楽しそうにトリオで歌っている曲が収録されています。

陽気な気分になりたい時はいいです。

Canciones De Mi Padre: A Romantic Evening in Old Mexico

ロサンゼルスで1991年に行われたメキシコ音楽の公演を収録。

Frenesi

スペイン語で歌うアルバムの第3弾。メキシカン路線から離れ、幅広いタイプのラテン音楽を披露しています。

ストリングスやホーンを起用した厚みのある演奏をバックにリンダが楽しみながら歌う姿が目に浮かびます。

Winter Light

長年一緒に活動してきたピーター・アッシャーがプロデューサーから離れて、彼女自身がプロデュースしたアルバム。

オープニング曲ではホワーンとしたシンセをバックに淡々と歌い、エンヤっぽいヒーリング・ミュージックの世界になっています。

その後、従来のサウンドに近いしっとり目の曲の中に、ヒーリング的曲が挟まっていきます。

全体的におとなしめの曲が多く、元気さがないことに物足りなさを感じます。

Feels Like Home

カントリーの世界に回帰した作品。バックの演奏がシンプルで素朴さがある分、彼女の力づよい歌声が映えています。

ミュージシャンとしての数々の冒険を終え、ようやく我が家に帰ってきたという感じ。まさにアルバムのタイトルとおりです。

ラストはエミルーとのハモリが絶品のなつかしさをたっぷりと感じる曲で終了。

Dedicated To The One I Love

オールディーズや70年代の名曲を子守唄アレンジで収録したもの。クイーンのWe Will Rock Youもやっています。

リバーブたっぷりの奥行きと広がりのあるストリングセクションやシンセのサウンドをバックに、リンダが落ち着きのある優しい声で歌っています。ゲストで招いたヴァレリー・カーターの透明感がある声とのハーモニーにはうっとりとします。

ラストはビートルズのGood Night。ほんわかとした気持ちでアルバムが閉じます。

We Ran

ローリング・ストーンズやザ・フーなどのロック大御所のプロデューサー/エンジニアをやったグリン・ジョンズのプロデュースで、トム・ぺティー&ハートブレイカーズのマイク・キャンベル、ベンモント・テンチらロック・ミュージシャンを招いてレコーディング。

カラっとした、ゆったり目のロック・サウンドをバックに歌っています。

ボブ・ディラン作のJust Like Tom Thumb's Bluesを筆頭にベンモントが弾くハモンドオルガンがいい雰囲気を出しています。

全体的に心に刺さる曲がなく、さらっと時間が過ぎていく感じ。

Trio II

リンダ、ドリー、エミルーによるカントリー曲アルバムの第2弾。

1994年にはレコーディングが終わっていたものの、レコード会社の思惑によって発売が止められ、1999年にドリーとエミルーがレコード会社を変わったことを契機に解禁されました。その間、待ちきれなかったリンダは、10曲中5曲をドリーのボーカル抜きでリミックスしてフィールズ・ライク・ホームで発表していました。

カントリー・ソングが好きな方はどうぞ。

Western Wall: The Tucson Sessions

グリンをプロデューサーに迎えて作ったエミルーとの共作アルバム。

カントリーっぽさと70年代後半のリンダのアルバムの世界が同居する不思議な感覚です。

リンダとエミルーの声質の違いが面白さを加えています。

A Merry Little Christmas

Hummin' To Myself

ジャズのスタンダード曲を歌ったアルバム。リンダがネルソンと一緒にやりたかった曲だそうです。

演奏がオーケストラではなく、ジャズバンドになっていてネルソン3部作よりもジャズっぽさが強いです。都会的なおしゃれなサウンドになっています。

歌唱力が際立っていて、ゆったりとした豊かな気持ちになります。

Adieu False Heart

2002年にルイジアナ州在住のケイジャン音楽家のアン・サボイのアルバムにゲスト参加したことが縁となり、2人でザ・ゾゾ・シスターズと名乗って共作したアルバム。

フィドルとアコギの調べをバックに、リンダが高めの声、アンが低めの声でハモッています。

アメリカの田舎を思い浮かべながら、ゆったりとした気持ちで二人の歌声に癒されます。

2011年、引退を表明。2013年に病気のために歌うことができなくなったと明らかにしました。







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